訪問診療クリニックの開業で最初の紹介元を作る準備
開業したばかりの訪問診療クリニックには、紹介の実績も顔なじみの連携室もありません。開業前の3ヶ月で、地域連携室・ケアマネジャー・訪問看護との最初の接点をどう作るか、挨拶の順番、持っていく資料、サイトで受け止める準備を整理します。

訪問診療クリニックは、開業初日に患者さんがいません。外来のように通りがかりの来院もありません。最初の患者さんは、病院の地域連携室、ケアマネジャー、訪問看護ステーションのどれかから紹介されて来ます。つまり開業準備で最も大事なのは、内装でも機材でもなく、最初の紹介元との接点を作ることです。
この記事では、開業前の3ヶ月で紹介元との接点を作る順番、挨拶に持っていく資料、挨拶のあとで相手がサイトを見たときに受け止められる準備をまとめます。営業経験のない院長を想定して、無理のない範囲で書いています。
開業直後の紹介は「顔を知っている相手」からしか来ない
連携室の担当者もケアマネジャーも、紹介先を選ぶときはまず自分の頭にある候補から当たります。開業したばかりのクリニックは、この候補に入っていません。名簿に載っただけでは候補に入らず、担当者が「あの先生なら」と思い出せる状態になって初めて紹介が来ます。
開業前の挨拶は、この「思い出せる状態」を作る作業です。1回の挨拶で覚えてもらえるとは限りませんが、挨拶をした相手のうち何人かは、最初の紹介をくれます。その最初の紹介にきちんと対応し、経過を報告すると、2件目、3件目と続きます(弊社が聞いた範囲では、開業初年度の紹介元は、開業前に挨拶した先の数社に集中する傾向があります)。
挨拶の順番
開業前の3ヶ月で回る相手には順番があります。時間に限りがあるので、効果の高い順に並べます。
後方支援を頼む病院の地域連携室
最初は、緊急時の入院先として連携を頼む病院です。後方支援の相談をする過程で、連携室の担当者と必ず接点ができます。この病院は退院患者の紹介元にもなるため、後方支援の相談と紹介のお願いを同時に進めます。
対応エリア内の居宅介護支援事業所
次に、対応エリア内のケアマネジャーです。事業所の数が多い地域では全部は回れませんので、エリアの中心に近い事業所と、規模の大きい事業所から順に回ります。地域包括支援センターに先に挨拶しておくと、地域の事業所の情報を教えてもらえることがあります。
連携を頼む訪問看護ステーション
訪問看護は紹介元であると同時に、日々の連携相手です。開業前に「指示書はこの日数で返す」「夜間はこの番号」と体制を伝えておくと、開業後の連携が最初から回ります。
地域の医師会と、近隣の外来クリニック
医師会への入会は、地域の在宅医療の情報網に入るために有効です。近隣の外来クリニックは、通院が難しくなった患者さんを紹介してくれる相手になります。「先生の患者さんで通えなくなった方がいたら」と伝えておくだけで、開業後に連絡が来ることがあります。
挨拶に持っていく資料
名刺だけでは、相手は覚えられません。次の3点を用意します。
クリニック紹介の1枚
A4の表裏で、対応エリア(市区町村名と地図)、対応できる医療、看取りの対応、24時間の連絡体制、医師の顔写真と経歴、連絡窓口。関係者向けページと同じ内容を紙にしたものです。担当者は紙で受け取ったものをファイルに入れ、必要になったときに探します。
紹介申込書
FAXで送れる様式です。患者情報、主病名、必要な処置、退院予定日、連絡先の欄を作ります。連携室の担当者は、この様式があると依頼の手間が減ります。
ホームページのURLと、Googleビジネスプロフィール
紙の資料にURLを載せ、相手が後でサイトを開けるようにします。この時点でサイトが公開されていることが前提です。挨拶のあとで担当者がサイトを開き、関係者向けページで対応エリアと受け入れ条件を確認する、という流れを想定します(サイトが未公開だと、この確認ができず、紙の資料だけが頼りになります)。
挨拶のあとにサイトで受け止める準備
挨拶で名前を覚えてもらったあと、相手が動くのは「紹介したい患者さんが出たとき」です。そのとき担当者は、サイトを開いて条件を確認します。挨拶の内容とサイトの内容が食い違っていると、信頼を落とします。
関係者向けページに挨拶で話した内容を揃える
対応エリア、受け入れ条件、緊急時の体制、連絡窓口。挨拶で話した内容と同じことを、同じ言葉で書いておきます。挨拶では「がんの緩和ケアもやります」と言ったのに、サイトには書いていない、という状態を避けます。
受け入れ状況を表示する
開業直後は受け入れに余裕がありますが、患者さんが増えてくると受けられない時期が出ます。「受付中」「要相談」「一時停止」の表示を関係者向けページに置き、変わったらすぐ更新します。担当者が最も避けたいのは、紹介してから断られることです。
開業のお知らせと、その後の更新
「◯月◯日に開業しました」のお知らせを出し、その後も「対応エリアを広げました」「訪問看護◯◯と連携を始めました」のような更新を月1回程度続けます。挨拶した担当者が久しぶりにサイトを開いたときに、動いているクリニックだと分かる状態を保ちます。
開業したばかりの訪問診療クリニックが最初の紹介を受けるには何が必要か
開業前に、後方支援病院の連携室・エリア内の居宅介護支援事業所・連携する訪問看護に挨拶し、クリニック紹介の1枚と紹介申込書を渡し、サイトの関係者向けページで挨拶の内容を受け止められる状態にしておくことです。最初の紹介に対応したら、訪問開始と経過を報告し、次の紹介につなげます。
2026年度の改定は、地域で面として支える体制を評価する方向にある
2026年度(令和8年度)の診療報酬改定では、地域で重症患者の訪問診療や在宅看取りを積極的に担う医療機関の評価を充実させる方針が示され、往診時医療情報連携加算については、支援を受ける側が機能強化型の在宅療養支援診療所・病院以外である場合にも算定できるよう見直されています(出典 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 質の高い在宅医療の推進」)。
開業したばかりの単独のクリニックでも、地域の他の医療機関と連携して24時間体制を支える形が評価される流れです。開業前の挨拶は、紹介元を作るだけでなく、こうした連携の相手を見つける機会でもあります(改定の詳細は告示・通知で確認してください。この記事は2026年度改定の概要資料に基づいています)。
よくある失敗
開業後に挨拶を始める
開業してから回り始めると、診療との両立が難しくなり、挨拶が途中で止まります。開業前のほうが時間があります。
資料が名刺だけ
名刺は名刺入れに入って終わりです。対応エリアと受け入れ条件が書かれた1枚がないと、担当者は後で思い出せません。
サイトが未公開のまま挨拶に行く
「サイトは準備中です」と伝えると、担当者は確認する手段がありません。開業の2ヶ月前にはトップページと関係者向けページを公開しておきます。
挨拶で言ったことがサイトにない
挨拶で伝えた対応範囲と、サイトの記載がずれていると、担当者は「どちらが本当か」と迷います。挨拶の前に、サイトの内容を最新にしておきます。
最後に
訪問診療クリニックの最初の紹介元は、開業前の挨拶で作ります。後方支援病院の連携室、エリア内の居宅介護支援事業所、連携する訪問看護の順に回り、クリニック紹介の1枚と紹介申込書を渡し、サイトの関係者向けページで受け止める。この準備ができていれば、開業初月から紹介が動き始めます。
ケアつくでは、在宅医療のクリニックに絞ってホームページを制作しており、関係者向けページと紹介申込書はすべてのプランに含めています。挨拶用のクリニック紹介の1枚もオプションで作成していますので、開業準備の段階からご相談ください。


